2017年吉日

今回は93歳のご婦人の話です。

はぁとふる内科・泌尿器科の伊豆高原を出て、左の方へ少し行った所に飲食店があります。そこの奥さんが、60歳位になるのでしょうか、その方から「家のお婆ちゃんを往診してほしい」と言われました。
先日私は、伊豆高原のはぁとふるの看護師長と一緒に、往診に行って来たのですが、そのお婆ちゃんは、こたつに座っておりましたが、股関節炎があるようで、動くのにも大変みたいでした。
“67歳の私と同じようでした。”

「何と!」びっくりしたことに、
そのおばあちゃんは生まれてから一度もドクターにかかった事がない保険証もなるべく若い人の世話になりたくないので使いたくないと言っておりました。

血圧が180ぐらいありましたけども、
今まで90年間も血圧が高いまま過ごして来たかも解りませんから、あえてここで降圧剤を処方するのは、お婆ちゃんに申し訳けない。この事で調子悪くなるかもしれないので、薬の処方はしませんでした。
お婆ちゃんは35か40歳くらいのお孫さんと一緒に住んでいると言うお話でしたが、家族に迷惑をかけないように自分でお風呂場まで、這えずって行き、お風呂に入り、自分の体を拭いたりしているそうです。
その他は、まぁ特に問題はないようでした。せっかく往診に行ったので採血ぐらいして帰ってきました。
今の天皇陛下もすごいのですが、この方も負けず劣らず素晴らしい人だなと思っております。
話は変わりますが、75、6歳の人が来て「足がしびれる、腰が痛い」とよくそのような訴えがあります。(人間の寿命は男性80歳位、ご婦人は85歳位)だと思っておりますけども、75歳、80歳の人はまだまだ長生きするわけです。
(85歳はもう、おんぼろ車、製造年月日が、古いから足がしびれる、腰が痛いのは当たり前じゃないか)って思っております。
そんな患者さんに限ってあちら、こちらの診療所、病院に行くわけです。
「ランプの光がついている時に楽しく人生を過ごしましょう」と言うのが私のポリシーでありますが、
やぶ医者に何回も行っても治る訳ではありません。
若くならなければ無理です!

私は25、6年前にある人にお願いされて、“伊豆高原便り”と言う小冊子に(たけやぶい)、と言う名前で文章を書いていた事があります。
その中で
“60歳以下で死んでしまうと損、60歳以上生きただけ得!!”
私ももう67歳、あと10年は何とか生きて行きたいと思います。
本当は自分でやってきた仕事が能力以上は流行って
「親父からはお前は能力の割にでき過ぎたなぁ」と言われた事もあります。
若いときから一生懸命、一生懸命頑張って!!
自分が頑張る事がプライドです。
我々は、頭の中は残念ながら皆一緒です。
“大切なのは親がどういう教育をしたかと言う事です。”
親父に恵まれたと言っても、お墓詣りに行く訳でもなく。
毎日、毎日、朝から晩まで暇な時は、感謝しております。

2017年吉日

今から25、6年前に患者様の岩田さんと言う方が中心となって、
肥田医師が「たけやぶい」と言う名前で「高原だより」、と言う小冊子を、
「今月の健康」と題し、毎月伊豆高原の方々に向けて発信していたものが、
最近川奈の診察室の、本棚からみつかりましたので、
毎月皆様に、肥田コラムでご紹介して行きたいと思います。
  今でも数十年たっても、何も変わってない肥田先生の思いが伝わります。

   「今月の健康」No.2  竹藪 醫(たけやぶい)

  「俺はごくつぶしだから早く死にたい。」と言いながら診療所へ来られる老人があります。大きな病院に勤めていると肺癌のような、どうこうしても「まず絶望的な病気」がもう、ものすごく大勢いるわけです。
ほとんどはお年寄りに多い訳ですが、なかには高校生の可愛いらしい女の子や、20歳前の陽に焼けたサファーなどが混ざっています。
生命保険会社のテレビのCMで卓球台の上を小さな人間が、無意識のうちに上手にボールに当たらないで歩いてゆくようなのがありましたが、癌にかかる可能性は、「ひょっとした、何かのはずみ」のようなものです。
大多数の方は、ほとんど平均寿命まで「病気を意識しないでも」長生き出来るのですが、一人二人とそうでない人も増えてきています。
癌の中には、肺癌のように早期発見しても、手術で全てを摘除したと思われても、あらゆる種類の抗がん剤を使用しても、まったく無効でそのまま知らずにいた方が、精神的にも肉体的にも経済的にも、 よっぽどプラスと思われるものから、胃癌のように早く発見できれば絶対に治る確率の高いものまであります。
アメリカのN・I・H(癌センターみたいなところですが)1980年頃がん死亡率を2000年までに半数減らすと言う大目標を掲げ早期発見法、や治療法などに、厖大な費用を使って、あれこれ試してみてはいますが、現在のところ 癌死亡率は減るどころか、やや増加の傾向にあり、あと残りの10年で半減させるのはもう絶望的であります。
主たる原因は、肺癌の増加で、ここ30年~40年間に、3倍ほどの肺癌の死亡率が増加しております。胃癌、子宮がんを早期発見して減らしても肺癌の脅威的な上昇で、全体としても死亡率は増え続けています。
日本でもだんだんとアメリカのような傾向になってくる訳でして、 もうタバコをやめることぐらいしか、手段は残されていないのです。
受動喫煙者(夫のタバコの煙を吸う妻子)又この逆も、約50パーセントも肺癌になりやすい事実があります。

  吉田兼好が「徒然草」の中で「人間は四十位で死ぬのがいい。」と書きあらわしてから幾世。
人類は(日本人)は未曽有の長寿社会へと突入しております。
60才まで生きれば、プラス・マイナスゼロ
60才以下で死んでしまうと損。
60才以上は生きただけ得。
ここで、私達は子孫のために何を残しておくべきか、いわゆる「後世への最大遺物」と言うことですが、「タバコを吸わないこと。」もその中に入れてもいいのかも知れません。

2017年吉日

今から25、6年前に患者様の岩田さんと言う方が中心となって、
肥田医師が「たけやぶい」と言う名前で「高原だより」、と言う小冊子を、
「今月の健康」と題し、毎月伊豆高原の方々に向けて発信していたものが、
最近川奈の診察室の、本棚からみつかりましたので、
毎月皆様に、肥田コラムでご紹介して行きたいと思います。
  今でも数十年たっても、何も変わってない肥田医師の思いが伝わります。

   「今月の健康」No.1  竹藪 醫(たけやぶい)

  ある雑誌に「日本のサラリーマンの悲劇」と言うエッセイがありました。要約してみると、「日本は一流のサラリーマンと二流のスポーツ選手、三流芸能人、四流政治家から成っている」と言われるくらい日本のサラリーマンは評価されてきた。
  しかし会社にすべてをささげて働いても見返りは少なく、虚無感に陥り、一方家庭内では権威が失墜した。妻との関係は他人の如くなり、子供達とは距離が遠くなり、夫婦断絶の極端な例としては、夫の下着を箸でつかみ、夫のものと自分のと別々に洗濯する。
定年後、一日中家でウロウロしているが夫が「粗大ごみ」と呼ばれたのが十年前、その後「産業廃棄物」と言われていたが、現代は「濡れ落ち葉」と言われ(いくら掃き除こうとしても地に張り付いて取り除けない厄介なもの)、最近は「オレも族」と言うようである。
  することもなく妻が行く所は何処でも「オレも」とついて行きたがると言うことである。
  さて本題に入るが、長寿も人間の願望であるが、問題はその中身、精神生活である。年老いても精神的に魅力的な人間でありたいと言う願望も、大切なことと考えたい。
  魅力的とは、美しいとか、可愛いとか外面的ではなく、少なくとも「隣人に笑いを提供出来る」、「朝、にこやかに笑顔を表現出来る」ような、世間に、何か貢献できると言う意味である。
  そして、どうも日本人は魅力の発揮できる場を「家庭に中」に求めないようで「外面はよいが・・・」ということになりかねません。
  数年前病院の勤務医だった時、40歳の肺癌の患者が亡くなられた時、奥さんを病院の玄関まで送っていった事があります。「どんな人だったのですか。」私は失礼も顧みず彼女に質問してみました。彼女は、「それは、それは素敵な人だったです。同じ運命であっても、もう一度、彼と人生を過ごしたいですよ。」と言って私に爽やかな笑顔を残して去っていった。

  血圧が、どうのこうの、コレステロールがどうこう、の前に我々は精神的に健康な魅力的な生活を、送るべきだと考えています。